60過ぎて、アスリート気取り~Like an Athlete after 60

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よく動けば、老後もすこやかに暮らせるか!? そんな試みを楽しむ日々を綴ります~~The fitness journey of a Tokyo woman in her 60's

私はいつだって私~Our Story Has Been Going On

またもや、良書と出会った。図書館の棚から目に飛び込んできた『愛媛県新居浜市上原一丁目三番地』(鴻上尚史著、講談社、2023/3/27発売)。

 
作家、演出家、映画監督として活躍されている鴻上尚史氏の自伝的小説。いや、自叙伝なのだろうか? 新居浜市で過ごした幼少期から高校時代、早稲田大学演劇部で汗を流した時代、そして、現在へと3部仕立てで「僕」の物語が一人称の視点で淡々と語られていく。

 

新居浜市は私の故郷でもあり、著者は同じ高校の2年先輩。しかも、小学校と中学校という違いはあるが、両親はともに教師という共通点付き。私のノスタルジアが発動しないわけがない。

 

出てくる地名や世界史の三井先生といった固有名詞に「あ~」と声を上げ、南にそびえたつ四国山脈の風景が目の前に広がり、昭和の地方都市の匂いが漂う。

 

本書の最後は、東京の杉並の地で暮らす63歳の著者がいる。仕事をするテーブルの傍らには近年お亡くなりになったご両親の夫婦位牌が置いてある。PCに向かって原稿を書きながら時々ご両親と対話するという。窓の向こうに広がる青空を見上げ、その先にある故郷を思う。人生の物語がひとつ終わっても、その思い出は心の中にあり、自分の人生は続く。書きたいテーマも、語りたい物語も、作りたい芝居も山ほどある「僕」は作品を書き続けている。

 

なんとも温かく、ちょっぴりせつないストーリー。

 

右:12/23の午後、川沿いに整列したススキと太陽

 

先日、生後2ヶ月半になったベビーと新米ママの娘が自宅に戻って行った。大きな安堵感や解放感とともに喪失感にも襲われている。人生は大なり小なりこうした出会いや別れの繰り返し。

 

鴻上氏が語るように、ひとつの物語が終わっても自分の人生は続く。私はいつだって私だ。

 

そんなことをあれこれ思いながら、昨日はランニングの後ものんびりと散歩した。晩秋のススキが広がる広場に午後の優しい日差しが降り注いでいた。そうだ、冬至の翌日だ。また、少しずつ少しずつ昼間が長くなっていくね。